Vol.7 トレッキング・イン・ラウガヴェグール・トレイル

イタリア『大雪原にたたずむ桃源郷を目指す』

空前のスノーシューイング・ブームに沸くイタリア
近代モデルの「ラッケッテ」 (スノーシュー)をアウトドアショップで見かけるようになったのは、10年ほど前のことだろうか。 その頃は、このシンプルな道具が、前例のない大ブームを起こすとは誰も想像しなかった。 「ラッケッテ」の驚異的な販売数を目の当たりにするようになったのは、ここ2年くらいのことである。 アウトドアグッズのオンラインショップを訪れてみると、今シーズン、ベストセラー上位3位を占めているのは「ラッケッテ」であり、おもなイタリアのアルパインガイドツアーや山岳協会などのウエブサイトは、「ラッケッテ」の楽しみ方やツアーを提案している。 このような“ラッケッテ熱”は、山の愛好家すべてに伝染したかのようだ。 かく言う私も、その感染からは逃れることができなかった!

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1. 家族みんなでラッケッテ

ハイカーの行動範囲をグンと広げた
「ラッケッテ」ブームの理由を3つ挙げてみよう。 最初の理由はかなりはっきりしている。 一般的に“夏ハイカー”の大多数は、12月から4月頃まで、雪のために山から離れていなければならなかった。 “スキーができない”、又は、“したくない”ので、それ以外の単純で退屈なアクティヴィティ(田舎の小道を見つけて歩いてみたり、街の公園を歩いてみたり...)を強いられた。 でも今は「ラッケッテ」が全てを変えた。 ハイカーたちは雪に覆われた森や静かな山頂を悠々と闊歩できるのだ! ついに、山は一年中満喫できる場所と化した。

2番目の理由は「ラッケッテ」自体の使いやすさ。 博物館から持ってきたような旧式「ラッケッテ」は単純な楕円の木枠と革の紐でできている。 今は、扱いやすいプラスティックとアルミニウムが、それらの素材に取って変わった。 また、古いタイプの「ラッケッテ」は、非常に険しい山行でも、より安全に歩くための小さいシュタイク・アイゼン(登山用具。鉄製の枠に鋭い爪を取り付けたもの。 雪や氷の斜面を登る際、登山靴の底に装着し滑らないようにする)に付加されたものだった。 一方、モダンな「ラッケッテ」は、例えばスキーのような特別なテクニックを必要としない。私たちは皆、歩き方を知っている。 間違いなく、子供から大人まで誰もが楽しめるのだ。

最後に上げる理由はその価格。 100ユーロさえあれば、ある程度のレベルの「ラッケッテ」とスキー用ストックが購入できる。 友達や家族と一緒に、スノーシューイングが楽しめる機会を購入したようなものだ。

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1.いまどきの「ラッケッテ」
2.急勾配も「ラッケッテ」でスイスイ登れる

中部イタリアで楽しむ「ラッケッテ」
「ラッケッテ」を楽しむためにより適した場所は、動物が残した痕跡を観察できるような森(ちょっとした幸運が必要だが)や、雪崩に遭遇するリスクがあるけれども海抜300m以上の高地だろう。 低地でもたくさんの雪があればいい。 私が後述する二つのルートは、Castelluccio di Norciaカステッルッチョ・ディ・ノルチャ の高地にある。 “イタリアの背骨”と称されるMonti Apenniniアッペンニーニ山脈の中部、マルケ州とウンブリア州の間に位 置する Parco nazionale dei Monti Sibilliniシビッリー二山脈国立公園だ。

ここは、標高1500mの丘の上に建つ小さな街Castelluccioカステッルッチョを取り囲む3つの高地、Pian Grandeピアン・グランデ、Pian Piccoloピアン・ピッコロ、Pian Perdutoピアン・ペルドゥトが、6月にラベンダーやレンティッキア(レンズマメ)の花々に覆われ、雄大な花畑が広がる地としてイタリアでは非常に良く知られている。 また、カステッルッチョは、360度を山々に囲まれており、特に、その国立公園で2番目の頂(標高2460m)を誇るMonte Redentoreレデントーレ山の壮大さが目前に迫る立地にある。

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1. 雪に覆われた森を行く

Fonte Canatraカナトラ泉から
Castelluccioカステッルッチョへ

今回の12キロのスノーシューイングは、4〜5時間の行程である。 比較的気軽なルートと言える。出発点は、ピアン・ピッコロ。 マルケ州とウンブリア州の州境の看板横に車を停めよう。 そこからは、ピアン・ペルドゥトを横断する西の方角へと向かう。
最初の40分間は難なく歩くことができる。クロスカントリー・スキーヤーが残した、スキー板の跡に続いて行くだけである。 この最初の行程で唯一厳しいことは、しばしば吹きつける氷のように冷たい強風。 この行程を歩いた1月上旬、私の温度計は午前11の時点で−12℃を記録した。 フェイスマスクは常備したい。

渓谷の底の突き当りには、いつも凍りついている「カナトラ泉」がある。 夏場はハイカーをはじめ、放牧牛や羊たちも、水を求める水源である。 そこから左手にある山間の隘路(あいろ。狭くて通りにくい路)を行く。 100mほど先は深い森に覆われている。 雪が降った翌日などに、この辺りをハイキングするのは最高だ。 新鮮な雪と空気が美しい空間を創り上げる。

その小さな渓谷は人通りがさほどないので、野ウサギやシカ、キツネなどを見つけることは難しいことではない。 私の場合は、無数の動物の足跡を発見しただけであったが...明らかにその日は寒かったが、動物たちにとってもその厳しさは変わらないようだ。

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1. カチンカチンに凍ったカナトラ泉
2. 野生動物の足跡を追って

約20分程度で、難易度がより高い、谷底の深い森の険しいトレイルに到着する。 この地点で2つの選択肢がある。 距離の長いルートの方は、比較的、穏やかな勾配になっており、リラックスした気分で山の背へと行くことができる。 ほれぼれと見とれるような展望を見ることができるのも利点だ。 一方、短いルートの方は、標高1,861mのローゼ山頂まで一気に直線距離で登って行くルートである。 確かにこの選択はパノラミックな展望には欠けるが、私たちのこの「ラッケッテ」で、よりアルパインムードを楽しませてくれる。 この「ラッケッテ」が、どれほど私たちのアクティヴィティの可能性を広げることができるか、身を持って体験することができるだろう。

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1. どんな場所でも「ラッケッテ」で自由自在
2. テクニック無しでここまでできる

山頂に到着すると、そこは息を飲むようなパノラマが。 360℃の空間が広がる風景。 麓には、雪で覆われたピアン・グランデが、ヒマラヤのような景色を見せている。 そこから間隔を置いて、空の青色にくっきりと姿を現すレデントーレ山の強壮な切断面。 しかし、とりわけ我々を魅了するのは、不思議な場所に建つ街の姿だ。 ゆっくりとした時が流れ、都市のカオスからずっと離れたカステッルッチョ。 小さな丘の上には、20にも満たない家がひしめき合って建っている。

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1. 山頂からの景色。 真っ白な山々と現代の“桃源郷”カステッルッチョ。

山頂からは、多くのハイカーたちが残していく足跡に続き街へと下る。 その痕跡は、夏の時期にローゼ山から飛び立つ、パラグライダーやハングライダーの愛好家たちが通る未舗装の道へと続いている。 長く続く下りを歩いていると、下方には、温かな家族や暮らしを想像させるような街の風景が目に入った。 あまり真剣に見入っていると、暖炉の煙がモクモクと上がる家々の屋根へ落ちそうな感覚に陥る。 このような珍しい環境下で楽しめるハイキングは、中部イタリアでもここしかない。

もしあなたがこの街を訪れることがあるならば、この土地の素晴らしい特産物が味わえる小さなタベールナ(大衆食堂)に行くことをおすすめする。 特にファッロ(スペルト小麦)のスープやレンティッキア(レンズマメ)のスープ、ペコリーノ・チーズ、最高においしい薄切りの生ハムやソーセージ、サラミの盛り合わせなどは、忘れられない思い出のひとつになるだろう。 食後はこの小さな街の小道を散歩したい。 この街の大きさから言うと、全てを見て歩くのに5分とかからないから。

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1. 麓にはカステッルッチョの姿が見える
2. 天気の良い日は屋外で舌鼓
3. カステッルッチョの通り

ここから出発地点へ戻る。 ここでも2つの選択がある。もしあなたがすでに疲れていて、なるべく簡単なルートを選択したいならば、アスファルトの道を1kmも下っていけばいい。 まだ余力が残っているならば話は別。 “フライト・センター(ハングライダー・パラグライダー)”のすぐ後方から、再び雪道のルートに戻ることができる。 この道は、カナトラ渓谷沿いの小さな森の中を通って行く低地にあり、30分程度で初めに出会ったカナトラ泉に着く。 ここからは、出発地点に登って行ったルートを取って行こう。

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1. 半日後もしっかりと凍りついていたカナトラ泉

◇ お役立ちサイト

>> イタリア・マルケ州政府観光局日本語公式サイト
http:// www.italy-marche.info

>> 全国スノーシューガイド
http://www.go-lands.com/ski/snow-shoe/snow-3.html

>> 日本スノーシューイング連盟
http://www.chikyunetwork.org/Snowshoe/cc_snowshoe.htm

このトレイルについて、本人にもっと聞いてみたいことありませんか?
あなたの思い出のハイキング体験談もぜひ聞かせてください!
ルカ・フェレッティ
イタリア人ハイカー。 地元、中部イタリア・マルケ州シビッリーニ山脈での豊富な経験を持ち、ヨーロッパ・アルプスの山々、日本では南アルプスなども踏破した。 ロッククライミング、アイスクライミングも得意。 マウンテンバイクのレースに参加したり、ヨーロッパ各国を自転車で周遊するなどサイクリングの達人でもある。 日本リフレッシュ・ウォーキング協会イタリア担当。

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