Vol.5
ハイキング・イン・ザ・モンブラン
『Mont Blanc, Hiking
  on the Roof of Europe』

(モンブラン〜ヨーロッパの屋根をハイクする)
  

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今月のハイカー ルカ・フェレッティ:イタリア人ハイカー。 地元、イタリア・アペニンニ山脈での豊富な経験を持ち、ヨーロッパ中の山々や日本の南アルプスも歩いた。ヨーロッパ・アルプスでのロッククライミング、アイスクライミングも好きで、ほとんどの高い山々に挑戦したという。他にもサイクリングが趣味でイタリア、オーストリア、ノルウェー、ギリシャ、アイルランド、スイス等を自転車で旅した。

ヨーロッパの屋根、モンブラン
モンブランはヨーロッパの最高峰。アルプスの西方に位置し、イタリア、フランス、スイス間の国境としても存在している。56%のモンブランはフランス、20%はイタリア、24%がスイスに属す。イタリアのモンブランの所在地はVALLE D'AOSTA州。このイタリアで最も小さな州はハイカーにとってまさに天国のような所。たくさんのハイキング・トレイルがある。

でも残念なことにそのハイキングシーズンは短い。標高2500m以上に降る雪のために、5月末から9月末がその時となる。最もにぎわうのは8月。ハット(山小屋)での宿泊は可能だが、2,3日前には予約しておいたほうがいい。ベースタウンとなるCourmayerでは一つ星から四つ星のホテル、ファームステイ、プライベート・アパートメントと、あらゆるタイプの宿泊先が選べる。

この町にはイタリアで最も古い《マウンテンガイド協会》がある。ここでトレイルの情報を得よう。またモンブラン山頂にトライしたいならばそこでガイドを雇うことをお薦めする。山頂へ到達するまではすべて険しく大変な道のりなので、プロのガイドが必要。マウンテンガイド協会では毎年夏に1週間または10日間のツアーを企画している。そのツアーでは3,4日間の雪の上でのハイキングに関するトレーニングが含まれており、ピッケル、ロープ、アイゼンの使い方も学ぶことができる。

Courmayerのマウンテンガイド協会

Gonella Hutトレイル 〜出発の前に〜
私たちがモンブランの山頂に立つという初めての経験のために選んだトレイルが“Gonella Hut Trail”。最も困難なトレイルというわけではないけれど、長い距離を行く3日間の行程になる。このトレイルでは細く長く延々と続くMiage氷河上を歩き、Bossonsの尾根道からモンブラン山頂へと到達する。そしてフランス側のGuoute Hutへ下って行くのだ。

私たち一行は海面とほぼ同じ高さにある町からCoulmayerに到着。新しい高度に慣れなければならない。ケーブルカーに乗ってTorino Hut標高3300mへ行き、そこで2日間のトレーニングをして過ごし、氷河上でのハイキングの感覚を取り戻した。
再びCoulmayerに戻り一晩を過ごす。8月はハイキングのトップシーズンで宿泊場所を探すのに一苦労。私たちはケーブルカーの駅の屋根下で、スリーピングバッグにもぐりこむ羽目になった。翌朝、そこで働く人々はコンクリートの上に横たわる6つのミイラを発見。彼らはただ笑っていた...

トリノハット付近でのトレーニング
モンブランを背景に

夕日に映えるモンブラン
トリノハットから

Gonella Hutトレイル 〜Veny ValleyからGonella Hut〜
緑がいっぱいの、そしてMiage Glacierから流れ出る豊富な水に恵まれたVeny Valleyへの細い道を歩く。一時間で私たちは氷河のふもとに到着。私はこの時の印象を今でもよく憶えている。そこには巨大なそして延々と続く氷河があり、ヒマラヤを思い起こさせた。10km以上歩いたところで、渓谷の底へと動く氷の音を聞いた。Miage氷河に立つとアリーナに立っている気分になる。まわりには氷河で彩られたたくさんの山々。あたかも大観衆のようだった。
最後の2kmは少しきつい。クレヴァスの迷路を通らなければならないからだ。それからようやくGonella Hutに到着。標高3,000m。小さいハットには約30人ほどが滞在できる。ここでは喧騒から遠く離れており、6、7時間も重いバックパックを背負い歩いてきたことさえも忘れてしまう。みなリラックスできた。スタートからのその高度さはすでに1,100mに達している。

Veny Valleyの滝

Veny Valley

Miage氷河へと向かう

Miage氷河

Gonella Hutトレイル 〜Gonella HutからBionnassay尾根道〜
このハットでハイカー達は気分をリフレッシュさせる。おいしいスープやパスタを食すのもいい。できる限りの休息が必要だ。翌日はかなりハードな日になるから。10時間以上も1,750mの傾斜を上って行かなければならない。私たちは2、3時間の仮眠後、午前1時に起床。朝食を取り、携帯用のボトルを熱いお茶でいっぱいにした。その頃、外気の温度はすでに−2℃。ほんの一瞬の間、出発前のハット内はとても混乱していた。そこには30人の人々がいて、30個の巨大なバックパック、30本のロープ、30本のアイス・エクス(氷上を歩くときに使うストックのようなもの)が氾濫。その小さな部屋では10ヶ国以上の言語が飛び交った! まさにアンビリーバブル!

友人の一人がギアのひとつを探しているうちに、私たちは最後のロープド・クライマーズ(各々がロープでつながっている)のグループに。でも最後尾になったおかげで、前方のハイカーのヘッドライトによってできた長く連なる“光の蛇”を見ることができた。今回のトレイルでたぶん最も危険なのはこの辺りだろう。ほぼ2時間、深い氷河の割れ目の上を何度もジャンプして超えなければならない。Bionnassay尾根道の手前ではアイス・エクスを使う。

尾根の上に着いた時はすでに午前4時半で、雲の間を抜けて行った。すでに標高4,050mだ! 私たちは言葉もなくしばらくその場に立ち尽くした。目の前には驚くべきほどに美しい日の出があり、漂う雲は大きなそして柔らかそうな海のように広がっていた。雪は太陽の光を受け赤く染まっている。このトレイルで最も美しい瞬間だったと言える。

朝日を受けて、Gonella Hutから

Gonella Hutトレイル 〜Bionnassay尾根道からモンブラン山頂〜
私たちは遅れていた。再びハイクを開始。その尾根を進んで行くとフランス側のモンブランを見ることができた。不思議なことにフランス側には雲がなく、底の谷間さえも確認できる。それから2時間、私たちはモンブラン山頂へと導いてくれるBosson尾根道の最後のパートで、しばらくの間休憩できる広い場所にいた。そこには“Wallot”と呼ばれる小さなハットがあり、ハイカーは緊急時の際に使うことができる。例えば悪天候や体調不良などがそうだ。そのハットは本当に小さいキャビンだがとても重要なもの。そこはレスキュー・ヘリコプターが唯一飛んでくることができる場所だからだ。

午前9時、私はBossonの尾根上でたくさんのクライマーたちを目にし驚いた。彼らは高山病のためにトレイル沿いの雪の上に座り込んでいたのだ。実は私自身も山頂の間際で同じような症状に陥った。4,600m地点に着いた時にひどい頭痛がし、突然目まいがした。私は大きなミスを犯していたのだ。あまりにも興奮していたせいで、トレイルの途中、十分に食べ物を採らなかった。私はパワーをなくし、そして高度差が体調をさらに悪化させていく。

雪の上に小さな穴を掘りバックパックをそこに埋める。15kgのバックパックとともに苦しみも消えた! しかしまだ気分がすぐれず、山頂までのほんの数メーターの距離を1時間近くもかけて歩いた。やっとの思いで私がヨーロッパの屋根の上に立った時、天気は快晴、気温は約−8℃。私たちはそこに2、3分間ほど留まって記念撮影をした。


Bossonの尾根道とモンブラン山頂

Vallotハットで休憩

ついにヨーロッパの屋根に立つ

Gonella Hutトレイル 〜モンブラン山頂からGouteハットそしてTete Rousse ハット〜
山頂からBossonの尾根道へと下った。Val lotのハットからはGouteトレイルに続いて歩く。このトレイルから上る山頂への道のりは比較的楽で、ほとんどの人々がこのトレイルを歩く。2時間ほどでGouteハットに到着。ここはとても大きいがいつも人で一杯だった。というわけで、私たちは宿泊できず。 3,100m地点にあるTete Rousseハットへと向かった。Gouteハットからそこまでの道のりは急勾配だけれど簡単に行ける、そこにはもう雪がない。午後5時到着。私たちはその日、14時間も歩いた計算になる。

その後おいしい食事にさえありつければと期待したが、今まで見たこともないほど小さいスープしかなかった。私たちがどれだけがっかりしたことか!加えてそのハットの部屋は小さいうえに40人ものハイカーが泊まっていた。そこで寝るということは、モンブランへの道のりよりも大変なことだった!

Aguille du midiでの夕日

Gonella Hutトレイル 〜Tete RousseハットからChamonix,そしてCourmayerへ〜
翌日ハットを午前7時に出発し、2時間ほど歩くとパノラマ景色が楽しめるLe Fayetのトラムウェイ着いた。電車に乗りこみ、小さなトンネルを抜けて、標高700m地点のSan Gervaisの駅へと向う。このトラムは1912年に操業し、その長い歴史の中でたった2回だけ故障を起こした。2回目の故障は1996年の8月12日、私たちが乗り合わせていた時のこと。ラッキーなことに30分ほどで新しいトラムが迎えにきてくれたが。

ついにChamonix(フランス側)に到着。すてきな町だけど騒がしい。私たちはその騒々しい町からすぐにでも逃げ出したくなり、バスのチケットを買いCourmayerに戻ってきた。 私たちは皆この旅に疲れていた。でもヨーロッパの屋根の上から美しい日の出眺めることができてとても気持ちが満たされていた。そしてこの素晴らしいモンブランをともに味わった5人の仲間との想い出は忘れがたいものとなった。

Veny Valleyの頂上

Veny Valleyに住むIbex


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あなたの思い出のハイキング体験談もぜひ聞かせてください!

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